契約の箱に注がれた血1

 

 エルサレムはBC六〇五、五九八、五八六年と、三度本格的にバビロンの攻撃を受け、陥落しましたが、ネブカデネザル王が破壊したソロモン神殿からバビロンに戦利品として持ち出された財宝と王宮の財宝などについて第二列王記二五章一三から一七節のリストを見ると、契約の箱はそれに含まれていません。やがて七十年が満ちて、エレミヤの預言どおり(エレミヤ2910)、捕虜から解放され、再びエレサレム帰還したユダヤ人はネヘミヤとエズラを指導者に立てて以前に劣る粗雑な神殿を再建して、バビロンから財宝が返還されましたが、その中にもエズラ記一章七から十一節によると、契約の箱はありません。

 

それは、この始めの抽囚が始まった時点で預言者エレミヤを始めとする忠実に宮に仕える祭司たちがバビロン軍に奪われないよう、最も重要な契約の箱をソロモン神殿から持ち出してエルサレムのどこかに隠したからです。当時バビロン軍から全面包囲されていたエルサレム城内で、祭司たちが神殿から大きな契約の箱を持ち出して、城外の遠いどこかの世界へ運び出すことは時間的にも環境的にも到底不可能だったはずです。

 

そのため預言者エレミヤと敬虔な祭司たちが迫り来るエルサレム陥落直前に祈って、聖霊さまに預言的に導かれて啓示されたエルサレム城内のどこかの洞窟内に契約の箱を隠したことは充分考えられます。聖書では事実これ以降、契約の箱のありかについての記録がなく、ただ黙示録十一章一九節では世界の終末期に天にある神の神殿の中に契約の箱が見えたとあり、終末の七年患難時代にもう一度隠されている契約の箱が世界に再登場する可能性があります。

 

聖書預言によると、やがて終わりの年に世界大戦が必ず起きます。その参戦国リストはこのようです。

 

「神である主はこう仰せられる。メシェクとトバルの大首長であるゴグよ。今、わたしは、あなたに立ち向かう。わたしはあなたを引き回し、あなたのあごにかぎをかけ、あなたと、あなたの全軍勢を出陣させる。それはみな武装した馬や騎兵、大盾と盾を持ち、みな剣を取る大集団だ。ペルシャとクシュとプテも彼らとともにおり、みな盾とかぶとを着けている。」(エゼキエル3835

 

これは新改訳聖書でしたが、明治時代の文語訳聖書ではこうなります。

 

「主の言、我にのぞみて言ふ。人の子よ。ロシ、メセクおよびトバルの君たるマゴグの地の王、ゴグになんじのかおをむけ、これにむかいて預言し、言ふべし。主かくいいたまふ。ロシ、メセク、トバルの君ゴクよ。みよ、われなんじをばっせん。」(エゼキエル3823

 

 ここで文語訳には新改訳で削除された「ロシ」という国名があります。他の外国語の聖書で調べてもここに「ロシ」という国名が確かにあります。むかし日本では古代ロシアのことを「ロシ」と呼ぶことがありました。世界大戦はロシアがイスラエルに軍事侵攻することから勃発します(エゼキエル38816

 

そして「ロシ」の後に出て来る国名「メセク」とはギリシャ語でモーシであり、これをロシア語にするとモスクワという言葉の原語になります。このような感じで他の箇所も翻訳すると本文の意昧はモスクワとウクライナの大首長なる「ゴグ」とは旧ソ連いまのロシアになり、ロシアと共に出陣する同盟国はむかしの「ペルシャ」なる今のイラン。「クシュ」なるエチオピアも参戦することになります。

 

しかしこの戦争でロシア同盟軍は徹底壊滅して敗戦すると預言されています(エゼキエル39章)。

 

そのためイスラエルに敗戦する予定のロシアの同盟国、「ペルシャ」なる今のイランにとってその顔でもある大切なイスラム教の神殿・岩のドームは現在むかしのソロモン神殿があった場所に建てられているため、敗戦国の立場上これが聖絶の対象として完全破壊されるでしょう。

 

イスラエルでは今でもできればこれを除いてソロモン神殿の復活のような第三神殿を同じむかしの場所に再建したいと願って日々嘆きの壁で祈っています。

 

こうしてユダヤ人の歴史的願い、もとの所にイスラエルのヤウエの神さまの第三神殿が再建されるその日が実現することになります(エゼキエル4048章)。

 

 略奪され、かすめ奪われた城内の土地の領域すべてを取り返し、反キリストの経済的支援のもと再建が成就して昔からのイサクの子孫ユダヤ人と、イシュマエルの子孫アラブ人との宿命的対決は幕を下ろします。そして四千年間もの歴史をかけ、隣国すべてを巻き添えにした兄弟大喧嘩に大勝利したユダヤ人にとって、主の神殿の更なる完成のために、礼拝と律法の中心であり、祝福の源と考えられる契約の箱(第一サムエル45、第ニサムエル612)、これがどうしても必要とされるでしょう。

 

再建されたイスラエル第三神殿にはすべての備品があるのに最重要な契約の箱だけが、そこにないのですから。